年代だけでは決められない
土器の内側に残った酒石酸、穀物のデンプン粒、醸造に使われた石臼など、酒の存在は間接的な痕跡から読み解かれます。痕跡が古いことと、現在と同じ飲み物だったことは別です。
そのため『酒全般』『穀物の醸造』『葡萄ワイン』を分けて考えると、最古をめぐる話が整理しやすくなります。
ラケフェト洞窟の穀物醸造
現在のイスラエルにあるラケフェト洞窟では、約13,000年前の石臼から、麦類を加工し発酵させたとみられる痕跡が報告されました。定住農耕が本格化する前の人びとが、葬送の宴などで醸造飲料を用いた可能性があります。
現代の澄んだビールとは異なり、粥に近い飲み物だったと考えられています。
賈湖の混成発酵飲料
中国・河南省の賈湖遺跡では、紀元前7000年頃の土器から、米、蜂蜜、果実を組み合わせた発酵飲料の化学的証拠が見つかっています。葡萄だけのワインでも、穀物だけのビールでもない混成酒です。
『飲料として確認された古い酒』という意味では、賈湖の例が重要な基準になります。
ジョージアの葡萄ワイン
南コーカサスのジョージアでは、紀元前6000〜5800年頃の大型土器から葡萄ワインの証拠が報告されています。葡萄ワインに限定して語るなら、現在もっとも古い有力例の一つです。
つまり『ワインが最古』という言い方は、葡萄ワインの歴史としては近い一方、酒全般の比較では補足が必要です。


